中性子捕捉療法は、腫瘍部に集積した放射線増感剤に熱中性子線を照射して放射線を放出させ腫瘍を死滅させようとする方法である。ガドリニウムもそのような放射線増感剤の一つで有るが、骨・軟部腫瘍の診断の際に使用する核磁器共鳴装置(MRI)の造影剤としても使用されるため、診断と治療が同時に行える可能性を有している。しかし、骨・軟部腫瘍についての研究報告はほとんどなされていない。そこで、本研究では、先ず、培養した悪性線維性組織球腫の細胞株にガドリニウムを作用させ細胞塊を作成し、その取り込みをMRI上で評価が可能かどうか検討した。ガドリニウムとしては、臨床で一般的に使用されているGd-DTPAおよびGd-DTPAを高濃度に含有したキトサンナノ粒子を用いて、MRIの画像上の変化を調べた。すると、MRIにてガドリニウムにより細胞塊の信号が変化することが確認できた。そして、信号強度からT1値を算出したところGd-DTPA、およびGd-DTPAを含有したキトサンナノ粒子は共にT1値を低下させ、その効果は、Gd-DTPAの方が大きいことが明らかとなった。しかし、細胞塊のガドリニウムの含有量の計測では、Gd-DTPAを含有したキトサンナノ粒子を作用させた細胞塊の方がより大きかった。この結果から、腫瘍細胞が高濃度にガドリニウムを取り込んだ場合は、MRI上では信号変化が少なくなりガドリニウムよる腫瘍の増強効果が低下することが示唆され、MRI上で診断と治療を同一に行うためにはその信号変化について今後更なる検討が必要だと考えられた。
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