研究概要 |
マイクロバブルは,直径が50μm以下の超微細な気泡であり,水中を浮遊する過程でナノレベルまで自然収縮し,最終的には内部の気体を完全溶解させて消滅するという性質を有している.この消失の過程で,マイクロバブルには帯電作用や自己加圧効果などの特性がある.また,マイクロバブルは,その崩壊時に局所的なジェット流が生じるとされている. 本課題においては,上記のマイクロバブルの性質を利用した,医学領域,特に整形外科領域での感染症の治療において,細菌性バイオフィルムの洗浄,破壊,殺菌効果に対する研究を行なうこととした. 本年度は,まず,in vitroにおける実験モデルの確立を行なった.バイオフィルムの形成には,グラム陽性菌として黄色ブドウ球菌,グラム陰性菌として大腸菌と緑膿菌を使用した.この中で,バイオフィルム形成能が高く整形外科領域の感染症で起因菌となりやすい黄色ブドウ球菌での解析が最適と判定した.整形外科感染症のモデルとして,金属表面に形成させたバイオフィルムを対象に選んだがは形成されたバイオフィルムは比較的脆弱であり,通常の洗浄のみで容易に除去可能であり,モデルとして不適切であったため,ポリフィラメントの繊維成分を使用する事でその問題を解決できた. また,医学領域で用いることを前提とした,マイクロバブル発生装置開発を行ない,マイクロバブルの発生状況を計測した.本装置により,医学的利用(特に洗浄,殺菌への利用)に不可欠と思われる滅菌状態を維持しながらバブルを作製する方法が確立できた.今後は条件の最適化による,効率的な発生方法について研究を継続する予定である.また,種々の封入気体を用いることによる,洗浄殺菌効果の増強についても検討予定である.
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