研究概要 |
ヒト夜間前頭葉てんかん(ADNLF)の原因としてニコチニックAChチャンネルのα4及びβ2サブユニット遺伝子群に数種類の変異が明らかとなっている。我々は既にヒトADNLFと同じ変異をα4サブユニットに持つ遺伝子改変動物(S284L-TG)をラットを用いて作出し、しかもヒトと同じパターンの自発性痙攣発作を観察している。さらにヒトADNFLの中に、高率に認知障害を合併するタイプがあり、本年度はこの遺伝子変異を導入した疾患モデル動物の作成及び確立をめざした検証を行った。 変異遺伝子を発現ベクターに組み込み,HEK293細胞でのチャネル発現を確認後、ラット受精卵へのトランスフェクションを行い、4系統のラットを得た。各系統の変異遺伝子の発現量,組織学的検索を行い,遺伝子導入モデルとしての妥当性の検証を行った。まずビデオと脳波の同時測定により、自発性痙攣発作の有無をスクリーニング指標とした。この新たな系統の中で自発痙攣発作を起こすものを選び、変異遺伝子コピー数、繁殖性、一般行動を解析し、系統の確立を行っている。 一方、比較対象となる、既に作出および系統確立を行ったS284L-TGラットの一般行動解析及び記憶・学習,不安,自発運動量等を解析した。その結果,S284L-TGは新環境への導入時の活動性の増加が見られ,新環境への不安行動に関して正常動物との違いを見いだしたが、認知機能における異常は見られなかった。よって本年度新たに作出した系統と、認知機能での比較がこの系で可能であるとを明らかとした。
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