研究概要 |
今回の萌芽研究により、女性ホルモンによってどのように免疫システム、特に抑制型Fc受容体(IIb)が制御を受けているのか、妊娠母体特有の性ホルモン環境を利用し、女性ホルモンによる免疫抑制型Fc受容体の新規調節機構を明らかにするために研究を開始した。初期、中期、後期の正常妊婦さんより血液の収集を継続して行っている。採取した血液より、単球、リンパ球、好中球を単離、RNA抽出。女性ホルモン受容体(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体)とFc受容体(FcR I, IIa, IIb1,IIb2,III,胎児型)mRNAのreal-time PCR定量解析をすすめている。 また、蛋白レベルのFc受容体の解析を進めるため、Fc受容体(FcR IIa, IIb,胎児型)に対する抗体を作製した。作製した抗体の特異性を検定するため、Fc受容体(FcR I, IIa, IIb1,IIb2,胎児型)を白血球細胞よりクローニングし、GFP融合Fc受容体ベクターを作製、COS7細胞にトランスフェクションし、Fc受容体を発現させた。Western blotにて、作製された3つのFc受容体抗体は特異的に各々のFc受容体を認識していることを確認した。Fc受容体(FcR IIa, IIb)抗体を用いて正期産胎盤を免疫染色したところ、胎盤絨毛内のマクロファージ(Hofbauer細胞)はFcRIIaのみを発現し、脱落膜に存在するマクロファージはFcRIIaとIIbの両方の受容体を発現しており、胎盤の生殖免疫系における新知見を得た。今後、この知見に関してもさらに検討を進める予定である。
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