産科学の教科書に記載されているように従来、妊娠中妊婦の肝臓は大きくならないと考えられていた。本研究提案の目的は、妊娠時に肝臓増殖を伴った妊婦肝臓が大きくなることを証明し、更にはその妊娠時肝細胞増殖因子を同定することである。 本平成18年度の研究にて、少なくともマウスにおいては妊娠中に妊婦の肝臓が大きくなることを証明した。非妊娠肝臓重量に比べて、妊娠時での妊婦肝臓重量は有意に重いことが明らかになった。約1.7倍の重さであった。その次にBrdUを非妊娠および妊娠マウスに投与後、肝臓のBrdUの取り込みを細胞レベルで解析した。その結果、妊娠時肝細胞でのBrdUの取り込みは非妊娠時の取り込みと比べて有意に10倍以上の取り込みが見られた。よって、妊娠時に見られる妊婦の肝臓は肝細胞増殖を伴った肥大化・重量化が見られることを証明した。 平成19年度に妊娠性肝細胞増殖因子同定のための基礎実験も開始した。それは、二点である。まず一点は肝細胞増殖時期の同定である。すなわち、妊娠時のいつに肝細胞増殖が起きるかを調べることである。妊娠時期ごとにBrdU取り込みを調べる予定である。いずれにしてもかなりの数の妊娠マウスが必要なため、時間がかかることが予想される。しかし、この結果妊娠性肝細胞増殖因子の発現時期が予想されるため、因子同定の大きな手がかりになるであろう。 二点目は胎児数/胎盤数と肝細胞重量増加/肝細胞増殖活性との相関関係の解析である。もし、相関関係があれば、これも因子同定の大きな手がかりになる。
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