研究概要 |
進行頭頸部癌の5年生存率はいまだ50%以下であり、その約2/3は局所再発、そして約1/3は遠隔転移である。拡大切除術や再建外科の進歩、或いは化学療法併用放射線治療により局所コントロールの制御は今後の改善が期待できる。しかしながら遠隔転移の制御については、新規の抗癌剤も出現しているが、より効果的な術後アジュバントについてはまだまだ解決すべき点がある。 遠隔転移を形成するにあたり局所腫瘍からの脱離、そして末梢血中に播種していることが示唆されるが、これらを同定するために、まず我々は上皮に特異的な分子及び癌特異的分子の検索を行ない、CEA,SCC,CK-14,CK-19,CK-20,PVA,EpCAM,E48を調べる候補分子とした。末梢血液中のがん細胞播種モデルとして、末梢血単核球と頭頸部扁平上皮癌を様々な比で混合し、上記マーカーのうちCK-19の発現を分子生物学的手法(real time QRT-PCR法)で調べたところ10^6に1個のがん細胞が同定可能であった。 現在他のマーカーについても同様に調べ、血中のがん細胞同定に適した分子の決定及び手技の確立を行なっている。 一方、最近癌幹細胞が注目されており、自己複製能と分化能を有する一部の細胞(癌幹細胞)が転移や治療抵抗性に関わっていると言われている。頭頸部扁平上皮癌においては、CD44+の細胞がこの癌幹細胞のマーカーとなることが報告された。我々の有する7つの頭頸部癌細胞株を調べたところ、その比率は<5%と極めて少数であったが、その存在が確認できた。現在これらのCD44+細胞の分離を試みているところである。 また、このCD44+細胞は幹細胞関連遺伝子であるBMI 1 geneの発現を認めることが報告され、現在癌組織標本におけるこれらの細胞の存在を免疫組織化学法によって確認しているところである。
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