PAP-1は癌遺伝子産物Pim-1の結合因子として我々が単離した分子である。その後、PAP-1遺伝子は網膜性色素変性症RP9の原因遺伝子であることが明らかとなり、PAP-1機能と、その機能破綻による網膜性色素変性症発症機構に研究の重点を置くこととなった。 現在までに、PAP-1は転写スプライシング調節を行うこと、その機能発揮にはPim-1からのリン酸化シグナルが必要であることを明らかにしてきた。今年度、PAP-1のより生理的な機能解明、PAP-1がスプライシング調節するターゲット遺伝子の同定を目標として以下の実験を行った。 1.PAP-1ノックダウン細胞株の樹立を行い、アデノウイルスミニ遺伝子を鋳型としたスプライシングアッセイ系で、PAP-1ノックダウンにより、アデノウイルスE1A遺伝子のスプライシング異常が起こることを明らかとした。既に明らかにしているPAP-1のスプライシング調節能をより詳細に解析できる系として今後が期待される。また、この細胞で発現変動しているタンパク質をプロテオーム解析することにより、PAP-1がスプライシング調節するターゲット遺伝子の同定が可能となった。 2.Strep-tag融合PAP-1発現株の樹立を同時に行った。Strep-tag融合タンパク質は磁性ビーズにより、ほぼ100%に近い高率でタンパク質が単離できる。従って、PAP-1結合タンパク質を簡便に抽出できる。現在、抽出した、PAP-1結合タンパク質候補を2次元電気泳動で展開し、タンパク質スポットをTOF-MS解析しており、複数の候補を同定している。来年度はこれらのタンパク質の解析を行う予定である。
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