今年度はSPG膜孔をそれぞれ1μm以下(ナノバブル)、5μm、10μm、15μm、20μmで酸素のマイクロバブルを作製し、また三方活栓、ペレスタポンプによる持続的バブリングを利用して培地中の酸素分圧を持続的に上昇させ、酸素濃度を安定して上昇させるシステムを確立させた。SPG膜のポンピングは回数に比例して増加したが、酸素飽和度が時間とともに低下する速度はほぼ同じ程度であった。また、生体利用可能なヒアルロン酸を追加して酸素濃度の培地中での濃度と持続時間を測定したが、粘液の程度によって酸素濃度の持続時間を変化できる可能性が示唆された。 また、これまでに入手したRGC-5(神経節細胞株)、rMC-1(ミューラー細胞株)、ARPE-19とD407(網膜色素上皮細胞株)で、上記条件で作成した酸素含有培地で細胞を培養するとマイクロバブル酸素含有培地は細胞活性(MTS測定)を有意に上昇させることが判明した。また、RGC-5細胞では特に培養初期に神経突起様のものが進展する状態が確認された。我々はさらに培養細胞にエタノールを付加あるいは低酸素+低栄養付加を加えて酸素マイクロバブルが与える効果について検討したが、これらの実験系においてもやはり酸素マイクロバブルは効果的である可能性が示唆された。一部の培養細胞で過酸化酸素(ROS)の測定をH2DCF-dAを利用してdichlorofluorescein (DCF)を測定したが、これまでのところ少なくてもROSの発生を刺激している傾向は見られていない。
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