研究課題
本研究では、ファージ由来溶菌酵素MV-Lの点眼時における眼表面における拡散時間を維持する方法として、高粘性保存剤(コンドロイチン硫酸Cナトリウムおよびヒアルロン酸ナトリウム)との混合投与の可能性の検討を行なった。まず試験管内において、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)株に対するMV-Lと共使用可能な保存剤の検討を行なった。反応液への5%コンドロイチン硫酸Cナトリウム添加は、MV-Lの溶菌活性を完全に阻害することから、使用不能であることが分かった。一方0.12%ヒアルロン酸ナトリウムの反応液への添加は、MV-Lの溶菌活性に全く影響を与えず、MRSAを効率よく溶菌した。しかし、MV-Lは0.25%ヒアルロン酸ナトリウムと混合後、4℃、1日以上保存することで、溶菌活性が完全ではないもののかなり失われることが分かった。このことからMV-Lとヒアルロン酸ナトリウムの混合の使用時調製は可能であるものの、混合状態での長期保存は困難と考えられた。マウス眼球に対数増殖時のMRSA培養液を5μ?滴下し、3分後に0.12%ヒアルロン酸ナトリウム含有のMV-L液あるいは0.12%ヒアルロン酸ナトリウム含有の緩衝液(対照)を約15μ?を眼球に滴下し、15分後に50μ?生食で洗眼後、残存菌数をコロニーカウントで計測した。その結果、MV-L投与群において菌数低下が認められ、眼表面でも溶菌活性を維持していると予想された。以上から、MV-Lの高粘性保存剤としてはヒアルロン酸ナトリウムが適当であること、および両者の混合状態での長期保存はできないものの、使用時に調製することで混合使用できる可能性が示唆された。
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