研究課題/領域番号 |
18659521
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
高松 英夫 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 教授 (50142427)
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研究分担者 |
阿邉山 和浩 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 特任准教授 (30284897)
田原 博幸 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 准教授 (70236719)
加治 建 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (50315420)
下野 隆一 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (60404521)
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キーワード | 消化管穿孔 / 新生児 / 壊死性腸炎 / ミコナゾール / マイクロアレイ |
研究概要 |
超低出生体重児に対するミコナゾール(MCZ)の経口投与により、消化管穿孔の発症率や死亡率が改善したという関連施設での臨床成績をベースに、MCZの持つ消化管保護メカニズムの解明を目的に研究を行った。まず実際の臨床検体を用いた真菌染色を行い、MCZ投与開始時期の前後においてカンジダ腸炎の所見がないことを確認した。In vitro実験では、MCZ処理したCaco2細胞が低酸素に対する耐性を獲得することを発見した。さらにPharmacogenomics的手法を用いたcDNAマイクロアレイによる遺伝子検索では、MCZにより発現が抑制される遺伝子としてEgr1とPARP1、増強する遺伝子としてGadd45 αの存在が明らかとなり、我々はこれらのタンパクに着目した。RT-PCRとWestern blotを用い、これらの遺伝子のタンパクレベルでの発現を確認した。さらに抗Ac-lysine抗体を用いたWestern blotでは、MCZによる細胞核内タンパクのアセチル化促進が起こることが分かった。またIn vivo実験として、Balb/cマウスにMCZを4日間経口投与し、その後上腸管膜動脈結紮による腸管虚血モデルを作成した。摘出した腸管標本にてHE染色と上記タンパク(Egr1、PARP1、Ac-lysine等)の抗体を用いた免疫染色を行い、MCZの虚血性組織障害に対する保護作用を確認した。Egr1とPARP1はいずれも虚血による組織障害の発症機序に深く関わっていることが分かっており、MCZによるこれらの遺伝子の抑制と腸管保護作用との関連が示唆された。またGadd45はDNA修復酵素であるが、DNAの脱メチル化を通して様々な遺伝子発現に影響するという報告もあり、また脱メチル化後に起こる核内ヒストンタンパクのアセチル化にも影響することが十分予想され、これらの複合的なメカニズムがMCZの消化管保護作用の有力なメカニズムである可能性が示唆された。
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