研究課題
Wister系ラット(オス・13週齢)を用い、顕微鏡下で、左顔面神経本幹と左舌下神経を露出させ、A群顔面神経麻痺モデル(denervation model)、B群端端縫合モデル(single innervation model)、C群端側縫合モデル(double innervation model)を作成した。個体数は各群6匹とした。非協調運動の評価:モデル作成後2ヶ月で顔面表情筋の動きをビデオに記録、特に、非麻酔科での髭の自動運動、摂食時の顔面の非対称(瞬目の増加、鼻背の非対称)、少量麻酔による沈静下での、角膜の空気圧刺激による瞬目の有無、髭のfibrillationを評価した。その結果、B群では6匹ともに通常は顔面神経麻痺を呈しているが、摂食と飲水時に顔面左に収縮(mass movement)を認めた。C群では正常ラットと全く変化を認めない4匹(C-1群)と、摂食と飲水時に左眼瞼の瞬目の増加を認めた2匹(C-2群)とに分かれた。トレーサーによる評価:複数の逆行性トレーサーを顔面表情筋(Whisker pad muscleと上眼瞼)へ局注、1-2週間の生存期間ののち、安楽死させ、4%パラホルムアルデヒドで還流固定、脳幹を摘出し、凍結切片を作成、蛍光顕微鏡にてトレーサーの蓄積を脳神経核で検出し、double innervationを検証した。結果、B群では6匹で、左舌下神経核のトレーサー蓄積が見られた。C-1群では眼瞼に注射したDilは左舌下神経核に認めなかったが、Whisker pad muscleに注射したfast blueの蓄積を認めた。C-2群では、Dilもfast blueも両方とも左舌下神経核に蓄積を認めた。C群では顔面神経核への正常なトレーサー蓄積も確認した。このことから、以下の結論に至った。1)神経二重支配は神経端側縫合で人為的に誘導可能である。2)二重支配されていても、Whisker pad muscleは摂食飲水で異常共同運動を起こさない。3)二重支配された場合、眼瞼の表情筋は摂食飲水で異常共同運動を起こす。4)従って神経端側縫合により、不全麻痺に陥った神経を刺激する場合、吻合する神経の種類により、異常共同運動が出ない場合と出る場合がある。
すべて 2007
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Journal of Plastic, Reconstructive & Aesthetic Surgery (accepted)