SOCS-3はJAKキナーゼ活性を抑制することで種々のサイトカインシグナル伝達を阻害することが明らかなことから、LIF刺激によるJAKの基質であるSTATのリン酸化を指標にSOCSのJAKキナーゼ活性抑制能が消失しているか否かについてsiRNA導入細胞を用いウエスタンブロット解析で調べた。その結果、SOCS-3ノックダウン細胞におけるSTAT-3リン酸化の抑制とSTAT-3転写の抑制を認めた。これらの結果はSOCS-3のRNA干渉法実験系が確立できたことを強く示唆した。私共は既にSOCS-3が細胞周期調節性転写因子DP-1と相互作用し、G1期からS期への移行を阻害し、細胞増殖を抑制するという興味ある知見を得ている。そこで、このSOCS-3のDP-1抑制能をSOCS-3-siRNAが干渉することができるかについてサイトフローメーターを用い、その細胞周期の遅延干渉作用について、さらに、サイクリン転写活性の抑制干渉作用について調べたところ、SOCS-3-siRNAはHEK細胞のG1-S期への明らかな遅延干渉作用を発現した。また、有意のサイクリン転写活性の抑制干渉作用も認められた。以上の結果から、SOCS-3-siRNAの細胞分化制御、発癌の制御や癌治療薬などへの新たな研究の方向性が示唆された。また、SOCS-3の新たな機能についての検索並びに解析するためのRNA干渉法を確立することができたものと考える。
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