硬組織発生において最初に起こる重要な変化は細胞凝集塊(集合体)形成である。その形成機構に働く分子を同定することは、硬組織の発生・分化を理解する上で重要であるのみならず、硬組織の再生を目指す医療の基盤となる。本研究では、骨格原基において細胞凝集塊形成に関わる新規分子を単離することを目的とする。そのために本年度は新規高精度発現プロフィール法(HiCEP法)を応用し、in vivoの微量な細胞凝集塊組織における網羅的な遺伝子発現解析を行うアプローチを確立することをめざした。 マウス胎生11日胚、12日胚肢芽の微小発生組織から直接骨格原基を切りだし、凝集塊部と周囲の組織に分け別々にRNAを抽出した。微量RNA(約10ng)をもとにHiCEP反応を行うため、従来のHiCEP反応を改良し、固相での酵素反応を行った。その上で得られた遺伝子産物の発現プロファイルを、キャピラリー電気泳動装置の泳動パターンとして描出した。positive controlとしたtype II collagen、Sox9遺伝子の発現が凝集塊部に高く、その周囲に弱いことを確認し、微量RNAから出発した反応でも十分に発現プロファイルが得られることを確認した。その上で約3万の転写産物のプロファイルを解析し、発現量に変化の認められた転写産物が約300種類得られた。そのうち約半数(150遺伝子)の単離が進み、それぞれの転写産物の遺伝子同定を行った。
|