研究概要 |
核内において転写とスプライシングは厳密に制御されており,成熟したmRNAとなった後核外に輸送されるため,スプライシングの異常から生じたナンセンス変異を保持するmRNAはナンセンス変異依存分解系(nonsense-mediated decay, NMD)により識別されて直ちに分解される。これに対し細胞質中に移行した成熟mRNAが修飾を受ける例がこれまでにいくつか見出されているが,その詳細は不明である。本研究では,神経終末から遊離された伝達物質ノルエピネフリンを再取り込みすることによりその神経伝達を終結させる働きを担うノルエピネフリントランスポーター(NET)のmRNA3'非翻訳領域の細胞質修飾について検証し,mRNA多様性を生み出す新規の過程を探索した。 ヒト,ウシ,ラットNET mRNAスプライスバリアントを同定,クローニングした結果,3'非翻訳領域において通常のスプライシングに従わないと考えられる異常な例を見出した。これらバリアントの発現は,種間,組織間で異なり,これまでに報告のない新規のmRNA修飾の可能性があることが考えられた。このスプライシングは,GU-AG則に従わず,またERで行われるフレームスイッチ型スプライシングでもないことが明らかとなった。 ミニジーンコンストラクトを用いた発現系での解析から,種間でのスプライシングの相違はそれぞれの遺伝子塩基配列に依存した機構で生じることが示唆された。
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