研究課題
1.Msx2-/-マウス顎骨の病理組織学的解析Msx2-/-マウスを対照Msx2+/+とともに、胎生10日齢から生後4日までは24時間毎に、さらに生後1週齢から4週齢まで各週毎に、4%パラフォルムアルデヒドで浸漬または還流固定をおこない、顔面頭蓋部をパラフィン包埋した。なお、固定1時間前にBrdUを腹腔内投与する。生後0日齢以降は脱灰したのち包埋した。これを切歯ならびに臼歯歯胚の割面が含まれるように前額断および矢状断で連続切片を調整した。これを10枚毎にHE染色を施した。顎骨嚢胞は、生後10日頃から組織学的に検出でき、歯胚に必ず関連した位置(歯胚の周囲)に生じることを明らかにした。2.Msx2-/-マウス顎骨嚢胞の形成とアメロブラスト分化の関連に関する免疫組織学的検討明確な嚢胞形成が開始時期から完成時期について、BrdUの取り込み、ケラチン分子種(pan-keratin、CK1、CK5、CK6、CK10、CK14等)、エナメル蛋白質(enamelin、amelogenin、ameloblastin等)、細胞外基質(パールカン、IV型コラゲン等)、インテグリン等について免疫組織化学を行った。ケラチン分子種の発現亢進が認められた。3.Msx2-/-マウス顎骨嚢胞の形成時期のShh、Wnt、BMP経路遺伝子発現レベルの形態学的解析顎骨嚢胞形成の限界期の前後の連続切片を用いて、ShhとShh経路の遺伝子Ptch1/2、Smo、Gli1/2/3、あるいはBMP経路のBmp4、Wnt経路のβカテニン、Frizzled、Lef1等の発現レベルをin-situ hybridizationによって検定した。胎生17.5日齢から生後0.5日のMsx2-/-マウス歯上皮では、Shh経路の遺伝子Shh、Ptch1/2の発現は対照と比べて差がなかったが、Bmp4、Lef1の発現が減少していた。4.歯原性角化嚢胞患者におけるのMsx2遺伝子異常解析ヒトの歯原性角化嚢胞の病理組織パラフィン包埋標本からDNAを抽出し、ポリメラーゼ連鎖反応PCRによってMsx2遺伝子のExon1およびExon2を増幅し、直接シークエンス法によってそれらの塩基配列を決定し、変異状況を検索した。30例の非症候群性歯原性角化嚢胞患者を調べたが、Msx2遺伝子の変異は認められなかった。