研究概要 |
本年度は,平成18年度の結果を踏まえて,NH...Oをプレ配置した新たなポリマーを合成し,歯質接着性の検討を行った。 1.材料の調製 Poly(ethylene-maleic anhydride)共重合体に,methoxyethyl amineとisocyanato ethyl methacrylate,またはmethionineを付加反応させたポリマー,ならびにmethacyloyl β-alanineポリマーの三種を作製し,これらを基にして調整した液成分と,FAlSiガラスとを組み合わせて新規のグラスアイオノマーセメントを試作した。 2.硬化性および歯質接着強さの検討 試作セメントの硬化性を評価したところ,最も良好な硬化性を示したPoly(ethylene-maleic anhydride)にmethionineを付加したポリマーからなる液とFAlSiガラスの組合せでも,硬化時間は約25分であり,市販品に匹敵する硬さは得られなかった。 一方,ヒトエナメル質および象牙質への微小引張り接着強さは,Poly(ethylene-maleic anhydride)共重合体とmethoxyethyl amine, isocyanato ethyl methacrylateからなるポリマーにmethacyloyl β-alanineとTEGDMA,クエン酸を添加した液と,CQを配合したFAlSiガラスの組合せが最も高い値を示し,それぞれ2.89±1.38,3.78±1.95MPaであった。市販のFujiIXと比較した場合,エナメル質では有意差が認められず,また,破断様式が主に被験体の凝集破壊であったことから,ある程度の接着性が発揮されているものと考えられた。しかし,機械的強度が低いため界面分析を行うには至らず,接着性の厳密な評価にはさらなる物性の改善が必要であることが示された。
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