研究概要 |
細菌感染がPeri-implantitis(インプラント周囲炎)の原因の一つであることは広く知られており、インプラント表面に感染防御システムを構築することは重要である。しかし、従来の抗生物質による療法は本質的に感染予防を対象にしていない。このような情況のもと、本研究は、抗原性の問題を惹起しない抗菌性合成ペプチドを開発し、それをインプラント表面に固定し機能させることにより細菌感染を予防し、Peri-implantitisに対して防御システムを持つインプラントを創製することを目的とした。 本年度は、前年度に引き続いて、チタン結合ペプチドと唾液中に存在する抗菌性ペプチド(Histatin5、Lactoferricin)との共役ペプチドを作製し、これらのペプチドのチタンに対する結合特性と、これらのペプチドの歯周病原菌に対する抗菌活性を検討した。その結果、チタン結合ペプチドを共役した抗菌ペプチド(minTBPl+His5, minTBP1+Lfcin)は有意にチタン基板に吸着し,非特異的ペプチドをブロッキングしても吸着量が多くなることが確認された。また、共役ペプチドを吸着したチタン板上では、未処理チタンと比較し歯周病原菌の活性を抑制することが明らかとなった。 以上の3年間の研究成果より、チタン結合ペプチドと抗菌性ペプチドを共役した合成ペプチドによるインプラントはバイオフィルム抑制能を併せ持つことが証明され、これらペプチドによる表面改質法はインプラント治療に有効な手段であることが明らかとなった。
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