口腔外科領域での顎骨病変において、自然免疫を中心とした骨免疫学的観点から生理活性脂質の重要性を明らかにし、顎骨およびその周囲の血管・結合組織を含む軟組織の病変・損傷修復が有効に行われるような条件を検討することが本研究の目的である。生理活性脂質としては、主に7回膜貫通型の構造を持つ受容体であるGタンパク関連受容体を持つ脂質メディエーター(プロスタグランディンなどを代表とする脂質)をターゲットとしている。 骨代謝学的に検討されていない生理活性脂質受容体欠損マウスを用いて、関節炎、骨粗鬆症、骨髄炎などの病態モデルあるいは骨欠損モデルを作製し、骨・血管・結合組織複合病変における生理活性脂質の役割をin vivoで明らかにしている。その多くは、受容体欠損により病態が回復しており、生理活性歯質が病変促進因子であることを示唆している。その受容体をブロックすることで、臨床的にも病態を改善できる見込みがあることがわかった。また、免疫担当細胞と骨関連細胞を上記の受容体欠損マウスより取り出し、in vitroでその相互作用を明らかにし、病態のメカニズムを明らかにしている。その多くは従来の骨関連細胞(骨芽細胞、破骨細胞)だけでなく、免疫担当細胞(T細胞、B細胞など)の関与が示唆された。 以上のように現在いくつかの生理活性脂質が骨免疫学上重要な因子であることを明らかにしつつあり、病態モデルの解析と、骨免疫学的シグナリングパスウェイを検討している。
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