研究概要 |
本研究では,顎関節症患者においてメタアナライシスにて抽出された炎症性サイトカイン(Interleukin (IL)-1およびIL-1 receptor antagonist (RA))の遺伝子多型が,顎関節症の増悪・促進因子として関与しているか否かについて検討するために,IL-1α,IL-1β,IL-1RAに各々存在するIL1A-889 C/T, IL1B+3954 C/T, IL1B+5810 G/A, IL1RN variable number of tandem repeats (VNTR)の遺伝子多型について,それぞれの発現頻度を統計学的に比較・検討した. 1.SWAB法を用いて採取された頬粘膜細胞例は272例(患者群63例,対照群209例)であり,それらよりDNA262検体(患者群62検体,対照群200検体)を抽出できた. 2.患者群と対照群ともにIL1A-889 C/T, IL1B+3954 C/T, IL1B+5810 G/T, IL1RN VNTRの4つの遺伝子多型の性差は,アレル頻度,およびジェノタイプ頻度ともに認められなかった. 3.IL1A-889 C/T, IL1B+3954 C/T, IL1B+5810 G/T, IL1RN VNTRの遺伝子多型のアレル頻度およびジェノタイプ頻度について群間比較を行ったところ,両群間に差はなかった. 4.日本人健常人200名におけるIL1B+5810の遺伝子多型のAアレル頻度は,0.560であった. 5.本研究の対照群のIL1A-889のTアレル,IL1B+3954のTアレル,IL1RN VNTRの2アレル頻度は,白人種健常人群より小さく,IL1B+5810のAアレル頻度では大きく,ともに有意であった. 以上より,本研究では日本人顎関節症患者における炎症性サイトカインの遺伝子多型(IL1A-889 C/T, IL1B+3954 C/T, IL1B+5810 G/A, IL1RN VNTR)が顎関節症の増悪・促進因子としての関与を立証できなかった.しかし,本研究で日本人健常人群200名のIL1B+5810の遺伝子多型のAアレルの発現頻度が0.560であること示すとともに,IL1A-889 C/T, IL1B+3954 C/T, IL1B+5810 G/A,およびIL1RN VNTRの遺伝子多型の健常人の発現頻度には,日本人と白人種間で明らかな差があることを明らかにした.
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