研究概要 |
本研究は,新規に開発された血管誘導性ペプチド(SVVYGLR)をナノゲルエンジニアリングを用いてナノ微粒子化することでDDS (Drug Delivery System)機能を付与し,それを唾液腺に局所投与する標的療法により口腔乾燥症(ドライマウス)治療として唾液分泌機能を再生させることを目的としている. 本年度は,ヒト唾液腺由来細胞(HSG)に対してSVVYGLRペプチドがその増殖や分化などにどのような影響を及ぼすかをin vitroにおいて分子生物学的検討を行った.また,in vivo実験での標的治療を行うための唾液分泌傷害モデル動物の作製を行った. その結果,細胞培養実験において,SVVYGLRペプチドをウェル底面に固定させた実験群は,3%BSAのコントロール群に比較してHSG細胞接着性試験(DNA Assay)および増殖性試験(MTS Assay)では,0.001〜10μg/mLのいずれの濃度のSVVYGLRペプチドでも有意に接着性ならびに増殖性が促進していた.また,細胞運動性試験では、非作用群と比較して0.01μg/mLで遊走能に有意差を認めた。 唾液腺分泌傷害モデル動物の作製については、放射線障害によるマウスのモデル作製において被曝死あるいは分泌障害が生じないという結果となり、照射量と分泌障害とのコントロールが困難であった。そのため,ラットの顎下腺導管をクリップ結紮する分泌障害モデルを作製し、現在、その病態を検討している。その結果,1週間のクリップ結紮により腺体内には著名な粘液様変性とそれに伴う小葉の破壊、炎症性細胞浸潤などが認められた.また、摘出顎下腺重量は結紮群では0.603±0.186gであり、コントロール群の0.383±0.031gに比べ有意に増加し、分泌障害を認めた。
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