研究概要 |
最初に,神経幹細胞の培養とその性質を検討した。胎性16日目のマウス線条体から細胞を採取し,EGFを含む無血精培地で1週間培養すると,浮遊状の細胞塊を形成した。この細胞塊を個別に培養し続けると底面に接着し,長い突起上の物を持つ細胞に分化し,個々の細胞毎に特色のある形態をしめした。これらの細胞をニューロンのマーカーであるMAP2,β-tubrinで染色し,また,アストロサイトの抗体であるGFAP,オリゴデンドロサイトの抗体であるCNPaseで染色するとそれぞれの抗体に特異的に染色される細胞が存在し,培養された神経幹細胞が異なる種類の神経細胞に分化したことが示唆された。 この細胞を生後1日目の新生マウスの小脳延髄槽に移植し,2週間から2か月後に灌流固定を行い,細胞の生着をみたところ,三叉神経脊髄路核や孤束核に多くの移植細胞が認められた。殆どの細胞はアストロサイトやオリゴデンドロサイトに分化したが,孤束核に認められた細胞はニューロンのマーカーであるNeuNの抗体に陽性を示し,ニューロンに分化していることを示した。以上の結果は,移植した神経幹細胞は脳内において環境因子の影響を受け,特定の細胞に分化する性質を持つことが示唆された。現在,ヒト乳歯歯髄より細胞を採取し,培養法を検討している。培養した細胞液を神経幹細胞に加え,分化を誘発させると,単独で分化する場合に比べて,異なる分化動態を示した。現在,神経幹細胞のニューロンへの分化率の違いを検討している。
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