唇顎口蓋裂が発生する分子機構はまだほとんど明らかにされていない。最近のわれわれの研究から、CBFbという遺伝子が口蓋の発生に重要な役割を果たす可能性を示唆する所見を得た。そこで今回、CBFbの遺伝子改変動物を用いてCBFbが口蓋の形成に果たす役割を検討する。CBFbはそれ自身DNA結合能を持たないものの、転写因子であるRunxファミリーと結合することで様々な下流の遺伝子の転写を調節する。Cbfbは、その遺伝子改変動物の表現系から、血液、骨、神経等さまざまな組織において、発生・分化に重要な役割を果たすことが明らかとなっている。ところで、われわれの研究グループは従来からRUNXファミリー遺伝子のなかでRUNX1に注目し、この遺伝子が口蓋形成に関わる役割について検討してきた。そして最近、Runx1の機能を阻害すると、一次口蓋と二次口蓋の間で口蓋裂が生じることを、最近見出した。Runx1mRNAの発現パターンとこの結果から、Runx1は口蓋の形成において上皮の癒合に関与することが明らかとなった。口蓋の形成においてもRunx1がその機能を果たすためにCBFbと結合することが必須であり、そのためCbfbは口蓋の形成に関与していることが示唆される。そこで、本研究ではCBFbが口蓋の形成に果たす役割について検討する。 今年度においては、器官培養系においてPol II系プロモーターで、CBFbのRNAi配列を含むmiRNA(miR RNAi)を発現させ、内在性のmiRNA経路を利用してCBFb遺伝子の制御を試みた。現在、エレクトロポレーションによって上記のベクターを遺伝子導入することに成功した。来年度においてはCBGb遺伝子のノックダウンの影響の詳細を、組織学的および生化学的、分子生物学的に解析する予定である。
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