研究概要 |
生体内における骨吸収の解析は,動物を用いて主に行われている.しかし,細胞培養系においてマウスとヒトのマクロファージ、マウスとヒトの破骨細胞を比較すると,生理活性物質に対する反応が異なることがある.プロスタグランジンE_2(PGE_2)は,マウスの破骨細胞の分化を促進するが,ヒト破骨細胞への分化を抑制する.本研究課題では,ヒト造血細胞由来の破骨細胞による骨吸収に及ぼすPGE_2の効果の検討を試みた.テトラサイクリン系抗生物質であるミノサイクリン(Mino)は、PGE_2の産生を介してヒトの骨吸収を抑制することが報告されている。H18年度にCD14陽性細胞およびマウス骨髄マクロファージをMinoで処理すると、RANKLで誘導する破骨細胞形成を抑制することを明らかにしている。Minoは、ヒト由来およびマウス由来マクロファージで、Cox2 mRNAを誘導しなかった。破骨細胞分化に必須な転写因子であるc-fosおよびNFATc1の発現を検討した。マクロファージをRANKLで刺激するとこれらの転写因子の発現は、著明に上昇した。しかし、マクロファージをRANKLと同時にMinoで処理すると両転写因子の発現が抑制された。これらの結果から、Minoは、PGE2産生を介さず、直接RANKLによるシグナルを遮断している可能性が示唆される。また、生体内においても、RANKL投与によって起こる骨吸収を抑制する結果を得ている。抗菌剤であるMinoが、骨吸収を抑制する可能性を示唆する。 マウスM-CSFとヒトRANKLが、ヒトCD14細胞の破骨細胞への分化を誘導するか検討した。しかし、マウスM-CSFはヒト破骨細胞を誘導しなかった。つまり、ヒト血液幹細胞をマウスに移植した場合、ヒト由来のM-CSFを投与する必要があると思われる。
|