これまで、研究者らは、新規に開発された人工ペプチドについてその性質について研究を行ってきた。このペプチドは、提供される状態としては液状であるが、塩に触れることで、ゲル状に硬化することが知られている。前年度にin vitroの研究より良好な結果が得られており、in vivoの実験動物(イヌ)を使用した実験を行った。研究者らは、イヌの臼歯に作成した歯周組織欠損に対し、人口ペプチド単体、人工ペプチド+歯根膜細胞を応用した。In vitroの結果と同様、歯周組織欠損に応用したペプチドは、血液中の塩と反応し、ゲル状に硬化した。このことから、in vitroのみならず、in vivoにおいてもこのペプチドをゲル状に扱うことができることがわかった。 8週間の観察期間中、歯肉および欠損周囲の組織には著名な炎症反応もなく、良好な治癒過程をたどっており、この人工ペプチドが生体為害性が少ないであろうことが示唆された。 その後に作成した脱灰組織切片においても、実験群、対照群ともに良好な治癒が認められ、特に人工ペプチドのみを入れた対照群においても一部新生歯周組織の形成が認められた部位も観察された。 現在までのところ、in vitroの研究より良好な結果が得られており、in vivoでの中型動物を使用した実験においても良好な成績が得られており、この人工ペプチドが歯周組織再生における新たな担体としての役割が果たせるであろうことが示唆された。今後、欠損形態、入れる細胞の種類、成長因子等を検討するさらなる研究が必要であろうと考えている。
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