研究概要 |
我国をはじめ世界各国とも急速な勢いで高齢化社会を迎え、さらに寿命は伸び続けている。しかも、WHOの試算によると、2020年の我が国では60歳以上の人が全人口の1/3以上を占め、自立した健康な高齢者の増加が強く望まれている。加齢とともに、咀嚼・嚥下機能は低下する。そして、栄養不足のみならず肺炎等の全身疾患を招く。しかし、咀嚼筋や嚥下関連筋の老性変化や病態を機械的に診断する方法はあるが、細胞レベルで診断する方法はない。本研究は、採取が簡単な頬上皮細胞を極少量用いて、細胞内情報伝達系酵素やメタボローム系酵素の加齢変化、異常蛋白質の出現や正常蛋白質の消失、脂質の蓄積等の情報を得、咀嚼筋細胞や嚥下関連筋細胞の老化の程度や病態を診断する方法を確立し、その診断から治療薬を選び得るよう、又は、予防法を提供できるようなオーダーメイドの医療の発展へとつなげようとするものである。平成19,20年度の実験から頬粘膜の老性変化を測定することで、咀嚼筋・嚥下関連筋の老性変化を類推できることが示唆されたので、カルボニルジイミダゾールの活性基がコートされたマイクロタイタープレートをPI代謝・Ca^<2+>放出系、グアニル酸シクラーゼ・cGMP系、アデニル酸シクラーゼ・cAMP系の主要酵素の抗体でコートし、種々の年齢層の頬粘膜細胞のホモジネートと反応させた。ELISA法にて測定すると、その老性低下が認められた。脂質代謝酵素系のマイクロタイタープレートのELISA法による測定でも、老性低下が認められた。しかし、代謝産物特に脂質の代謝産物や生理活性物質をコートしたマイクロタイタープレートのELISA法による測定では、老性変化が認められなかった。以上のことから、代謝産物や生理活性物質によるチップの作成より、細胞内情報伝達系酵素や脂質代謝酵素の口腔機能診断用チップの作成の方が老性変化を機能との関連で捉えられ易い。
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