石灰化ナノ粒子は、大気中や人体の内部に存在するとされ、石灰化を誘導することが知られている。特に腎臓結石などの誘因物質となるとされており、血清中のナノ粒子を検出する試みが行われている。口腔内での石灰化に関わる現象としては、歯石の形成や脱灰した歯の再石灰化がある。口腔内細菌のバイオフィルム形成による脱灰が進行するとう窩が形成され不可逆的な形態変化を起こしてしまうが、う窩の形成前に表層下から脱灰が起こりこの状態では唾液中のカルシウムにより再石灰化が起こり、治癒可能であることがわかってきた。従来は宿主の因子として再石灰化が起こりやすいかどうかを判定する方法は無かった。このような観点から、唾液中の石灰化ナノ粒子を検出定量できれば、歯石ができるか、再石灰化がおこりやすいかを予知できる可能性がある。 本研究課題では、唾液中の石灰化ナノ粒子の検出系、定量系を確立することを第一の目的とした。歯科医院来院中の患者13名に対して5分間間、ガムベースを咀嚼させ、刺激唾液を採取した。サンプルは-20度で凍結し保存した。唾液中ナノ粒子の定量には、NANOBAC社製NANOCAPTURE ELISAを用いた。今回の対象者13名中2名からナノ粒子が検出された。また、検出された1名の経過を7ヶ月経過観察を行い、3ヶ月後、7ヶ月後に刺激唾液を採取し石灰化ナノ粒子の定量を行ったところ3回とも石灰化ナノ粒子が検出された。 従来、血清中の石灰化ナノ粒子を定量する試みは行われていたが、唾液中に石灰化ナノ粒子が存在し検出できるかすら不明であった。今回の結果から、唾液でも石灰化ナノ粒子が検出、定量可能であることが明らかとなり、今後はさらに口腔内の詳細なデータと関連づけた検討を行い、再石灰化、歯石形成の予知に役立つマーカとなるかを検討してゆく予定である。
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