研究概要 |
平成19年度は、平成18年度に引き続き、1)人をベクトルあるいは行列式として表現すること、2)看護を表現する関数を作成することを目標として、特に看護行為の写像表現について検討を行った。 【主観的情報について】 主観的情報として存在しうるすべてのデータの集合S{s;s1,s2,…,sn}があるとする。s1,s2,…から任意の元を任意の個数iだけ取り出して新しい集合Siを作る。さらに、すべてのSiを元とする集合族を考える。このときその集合族は、Sのべき集合II(S)になる。)Sどうしの直積をm回とるとSmである。Smとは、Sのm次空間とみなせる。 【客観的情報について】 主観的情報と同様の操作を施す。 【主観的情報と客観的情報を組む】 SnとOmの直積を考え、これをDnmとする。これが、ある患者Qを表現するデータセットになる。Dnmには、(nのn乗)×(mのm乗)個の元(集合)が含まれている。 【情報とアセスメントの対応】 Dnmの要素には、ナースが考察しうるすべてのアセスメントの集合A{a;a1,a2,…}があると考える。a1,a2,…から任意の元を任意の個数kだけ取り出して新しい集合Akを作る。さらに、すべてのAkを元とする集合族を考える。このときその集合族は、Aのべき集合II(A)になる。DとII(A)というふたつの集合があるときに、集合Dの各要素に対してII(A)の要素がひとつだけ対応すると考える。つまり、この対応はDからII(A)への写像である。 この写像をfと表すとき、fの性質を調べた。代表的な性質として、「fは単射とは限らない」「fは全射とは限らない」などを導いた。この性質は、臨床的には看護診断の逆引きの禁止を表している。 【アセスメントと看護計画の関係】 Si、Ojが与えられたとき、必ずひとつのAkとPlが対応し、データからAkを対応づける機能f、アセスメントからPlを対応づける機能gについて、それ以外には存在しないことが導かれる。これが、看護過程を恣意的な推論と区別し、演繹的に導く機能をもたらす根拠になる。
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