古来から民間薬として用いられてきた馬の脂肪(馬脂油)の看護における予防的スキンケアへの応用可能性を検証することを目的に、皮膚機能、皮膚微小循環、熱傷治癒過程に与える影響をヘアレスマウスを用いて検討した。実験は馬脂油の他に看護の場でよく用いられるオリーブ油、ワセリンも対照として併せ検討した。 皮膚機能は、経表皮水分喪失量(TEWLg/m^2/h)と皮膚水分保有量(absolute unit)を測定することで評価した。皮膚微小循環に与える影響は、Mouse Dorsal Skinfold Chamberを背部皮膚に外科的に装着したマウスの皮膚微小血管網の細動脈血管口径、細静脈血管口径および細静脈血流速度を生体顕微鏡下で測定することで評価した。熱傷実験は、キシロカインスプレーを噴霧したマウス背部皮膚に150℃の金属片を1秒間軽く押し当てて熱傷を作製し、経時的に経表皮水分喪失量と皮膚水分保有量および熱傷面積を測定して熱傷治癒促進効果を評価した。 その結果以下のことが明らかになった。(1)経表皮水分喪失量は無塗布群に比べ、馬脂油、ワセリン塗布で有意に低下した。皮膚水分保有量は実験したすべての外用油において塗布後増加した。(2)皮膚の細動脈血管口径は無塗布群に比べ馬脂油塗布により有意に拡大し、オリーブ油塗布により有意に縮小した。(3)熱傷作製後の創傷治癒過程は馬脂油塗布により促進された。 以上から、馬脂油は皮膚機能を高め、皮膚微小循環を促進し、そしてそのことにより皮膚組織の再生を活性化し創傷治癒を促進することが示され、馬脂油は看護における予防的スキンケアに充分応用可能であることが実証された。
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