研究概要 |
色彩映像によるストレス緩和媒体開発の基礎研究としてオリジナルに作成した色彩映像の心理的効果を検討した。今回は映像選択システムを開発しその併用による色彩映像の感情刺激効果を調べた。 方法:コンピューターに取り込んだ「花」と「海」の5色彩系からなるオリジナル映像(それぞれ各色彩10枚、各計50枚の映像)から、個人の嗜好や感情状態に適した映像を選択させ、その感情刺激効果をみた。被験者は大学生40名。定期試験期間に色彩映像を提示し、その前後で多面的感情状態評価と唾液中のストレスホルモンを測定した。比較は被験者の3時点、(試験期の映像暴露前後、試験ストレスの無い時期)での各指標の変化とした。統計解析にはStatcel Version 2, Windowsを用いた。多面的感情状態尺度は8つの感情状態(抑うつ、倦怠、敵意、活動的快、非活動的快、親和、集中、驚愕)因子から構成される。本研究では特に精神的ストレスに関連する感情状態因子に注目し、その変化を検討するために感情尺度8因子の内のポジティな感情状態である「活動的快」、「非活動的快」、「親和」、およびネガティブな感情状態である「抑うつ」、「倦怠」、「敵意」の計6因子の平均得点を対象に統計学的検討を行った。MMSスコアの平均値の分布には正規性が認められたため、分析には関連のある2群のT検定を行った。また、CgAおよび、コーチゾールの生体ストレス指標に関しては値の個人差が大きく正規性が確認できなかったためウイルコクソン符号付順位和検定を行った。すべて両側検定とし有意水準はP<0.05とした。 結果:色彩映像を見た後では非活動的快(P<0,01)や親和(P=0.01)などポジティブな感情が有意に上昇し、抑うつ(P<0.01)、倦怠(P<0.01)、敵意(P<0,01)などのネガティブな感情が有意に抑えられた。また、この結果はストレス指標のクロモグラニンAの有意な低下(p<0.05)によっても確かめられた。 結論:個人の嗜好や感情状態に適した色彩映像は感情状態を副交感神経優位な状態に変化させる刺激効果があることが示唆された。
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