研究概要 |
本年度の研究では,慢性疾患を持つ学童期の小児のレジリエンスに関する文献分析の実施により,レジリエンスの形成に資する構成要因の探索を試みた。文献分析は2つの側面から実施した。 (1)小児のレジリエンス研究に関する広範囲な文献レビューの実施 レジリエンスの定義については,病気や災害などの困難で脅威的な状況に直面した際,それに対してそれを乗り越えて適応的な対応を取ることができる能力とするのがほぼ共通した認識であった。しかし,レジリエンス自体が多面的な要因を持ち合わせた統合的な概念であるため,研究によってレジリエンスに影響・貢献する因子のとらえ方は多岐にわたっており,このことがレジリエンスそのものの定義を難しくしている原因の一つであった。したがって,各因子・変数とレジリエンスの概念的構造との関係については,さらに整理・検討が必要であると考えられた。 (2)慢性疾患を持つ学童期の小児の体験に関する文献分析による,レジリエンスを促進する要因の抽出 国内外の小児がん,先天性心疾患,気管支喘息等の疾患を持つ小児の病気体験について検討した。その結果慢性疾患を持つ小児のレジリエンスには,自尊感情と周囲の人との関わりが強く影響していることが示唆された。 今回の2つの文献分析により,レジリエンスの形成に関係する要因の構造が整理された。これらの結果から,慢性疾患を持つ小児のレジリエンスを促進する支援方法を明確にするためには,レジリエンスに影響する要因間の関係性に焦点をあててとらえることが重要であり,その中でも,自己に対してのポジティブな認識と環境要因との相互作用がどのようにレジリエンスに影響するのかについて詳細な検討が必要であることが明らかになった。
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