研究概要 |
本年度の研究テーマは,「妊娠〜産褥期における腰痛症状および脊柱彎曲の変化の測定」であった.まず,17年度に使用した脊椎彎曲度測定器の改良(サイズや材質などの仕様)に取り組み,複数の調査施設を想定して組み立て式の新しい測定器を複数(2〜3台)製作する予定であった.しかし,一つの施設で十分な妊婦が確保出来ることが推定できたので,本年度は,その施設専用に新しい測定器の製作を行った.改良ポイントは,精度および安全性の向上と新機能の追加である.併せて測定時の視線や姿勢などを一定にするための治具を製作し測定方法の改良も行った.ただ,それらの検討や模擬測定,施設との調整などに予想以上の時間を費やし,実際に臨床で行う調査研究の開始時期が多少遅れる結果となった.一方で,推定どおりに対象者の確保は順調で,現状(1)初産10名,経産9名,計19名,(2)平均年齢29.15歳(3)平均週数17.3週であり,今後も新規を増やせる予定である.臨床調査では,研究趣旨に賛同が得られた妊婦を対象に,妊婦健診時を利用して,腰痛を中心とした自覚症状ならびに日常生活上の困難事項についての問診と測定器を使用した脊椎の彎曲状態の計測が予定通り行えた.結果,それぞれの調査項目について,妊娠の経過に伴う変化を確認できている.さらに,上記の調査項目以外にも足底の圧力分布や重心の変化,足首や膝関節の角度の計測などの調査項目を追加し,妊娠の経過に伴う重心や膝の曲げ角度の変化など腰痛に関する有用なデータの取得を行えている.しかし,調査スタートが遅れたため調査期間は最長で3ヶ月である.よって,その調査結果の検討は十分に行えいない.この状況を踏まえて,来年度から出来るだけ早く力学試験や数値シミュレーションを行うため,臨床調査と並行して取得した臨床データを用いてそれらに必要な試験条件や数理モデルの構築について検討を行っていく.
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