平成18年度における本研究の目的は、高次脳機能障害を発症した患者の家族が、発症後の経過の中で、日常生活に現れる高次脳機能障害に起因する症状をどのように理解していくのかを明らかにすることとした。 症状理解の過程については、あらかじめ文献検討を進めたが、先行研究において十分な成果が得られていなかった。そのため、研究デザインを質的記述的研究とし、研究方法は、当事者である家族が、患者の生活行動を通して症状を理解していった体験の語りを通して、質的に分析することとした。 現在までに、文献検討およびデータ収集に先立つ2例の面接から、【コミュニケーション場面】、【事故やトラブルの場面】を振り返ることで理解が深められ、【違和感を感じ取る】【症状として認知する】【トラブルの予測をつける】【手だてを思い描く】などの症状理解の「過程」のカテゴリーが抽出された。これらは、家族の不安を喚起しながら継続され、「落胆」「患者への悲観的見通し」という感情を生じさせており、対象者への面接時期、面接によるインタビューガイドの作成につなげることができた。 現在、さらにデータ収集を継続している段階にあるが、さらにフィールドを急性期病棟に移し、参加観察により発症初期から発症後1カ月くらいの時点での観察データと、1ヵ月後の面接を追加する予定である。
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