アトピー性皮膚炎の乳幼児をもつ母親に対する行動科学的教育プログラムを構築するにあたり、教育内容を「薬物治療、スキンケア、環境整備、育児スキルアップ」の4点に絞り、我々の現行の患者教育プログラム・教育教材(アトピーハンドブック)の内容について検討した。検討方法は、ガイドラインとの比較、教育プログラムに参加した母親のセルフケアに対するスキルチェック、アンケート調査およびヒアリングである。 結果、再検討した主な内容は、以下の通りである。 1.適切な軟膏量の標準値 ガイドラインで示された軟膏量は海外論文によるものであり、国内で販売されている軟膏チューブとの規格および日本人用の体格に合わせた標準量が必要となった。よって、母親の示指第一関節の長さの測定、国内販売の軟膏チューブの口径・長さ・量の測定、指導を受けた母親の実測値、0.5gの塗布面積を測定し、軟膏の塗布量の標準値を割り出した。 2.教育教材の記載内容の変更およびスキンケア表の作成 現行のものは重症患者を対象としたものであったため、中等症〜重症を対象とした内容に変更した。また、母親からのヒアリングにより改善・修正したスキンケア表を作成した。作成後、さらに母親や医療者からのヒアリングを数回繰り返し、完成させた。 3.母親のセルフケアのスキル習得のための教育方法 患者および母親の動機を高め負担感をさげるために、従来のモデリングによる指導に実践による指導を加えた。 以上をもとに、医師および看護師による3ヶ月間の行動科学的患者教育プログラムを作成した。このプログラムを実施するために、プログラムに関わる医師・看護師を対象とした病態、コミュニケーションスキルを含めた研修(約10時間)を実施した。さらに介入内容のマニュアルを作成した。教育プログラム開始後、システムおよびプログラムの修正と調整を行い、調査期間(介入期問+評価機関)6ヶ月間を網羅させる教育教材として「アトピーハンドブック」を完成させた。そして、行動科学的患者教育プログラムを開始した。
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