本研究は、歯肉溝浸出液生化学検査(歯周病リスク検査)を用いて、集団検診における歯周病リスク検査の有効性と定期的な歯科検診・保健指導の効果を評価することを目的とした。 対象は、2006年にA事業所健康保険組合22歳〜69歳までの1000名(25施設)である。検診時に口腔内を診査し、問診票によって口腔内衛生習慣状況を調査した。また2003年から毎年歯科検診を受診しているか否かも調査した。なお、歯周病リスク検査は、6種類で抗菌物質であるラクトフェリン(Lf)、出血および毛細血管の漏出の指標アンチトリプシン(AT)、生体防御反応の指標IgA、出血の指標ヘモグロビン(Hb)、歯周組織破壊の指標アスパルテートアミノトランスフェラーゼ(AST)、アルカリフォスファターゼ(ALP)とした。 1)歯科検診受診の3群は、「1回」群146人(14.7%)、「2-3回」群395人(39.7%)、「4回」群455人(45.7%)であった。3群間で年齢、性、空腹時血糖値、1年以内の歯科医院受診に有意な差はなく、受診回数が低い群ほど喪失歯数(P=0.025)、う蝕歯C2以上保持者(p<0.001)、CPIのP2以上者(p=0.003)、歯磨回数2回以下(p=0.014)、清掃度不良者(p=0.02)、現在喫煙者(p=0.019)が多かった。 2)受診回数が低い群ほど、歯肉溝滲出液生化学検査値のLf(F=7.07、P=0.001)、At(F=3.04、p=0.048)、IgA(F=4.57、p=0.01)、AST(F=7.05、p=0.01)が高くなっていた。 3)Lfの多重回帰分析は、標準化係数が「年齢」0.198(p<0.001)、「喫煙」0.104(P=0.005)、「受診回数」0.100(p=0.001)、「口腔内清掃度」0.079(P=0.017)であった。At、IgAでも同じ傾向だった。 毎年検診を受診している者は、歯周組織の炎症も含めて口腔内の健康状態がよく、禁煙した者も多かった。反対に検診受診回数が少ない者ほど口腔内の健康状態が悪く、喫煙者が多く歯の喪失も多かった。定期的に歯科検診の受診および保健指導を受けることは、歯科疾患および歯周組織の炎症低下に効果があることが示唆された。
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