我々が日常的に経験した「出来事」を様々な記憶要素の連合と考え、その脳メカニズムの解明を目指している。「場所」「人物」「物体」の3種類の記憶要素の脳内表象と、これらが情動体験と連合するメカニズムが研究対象である。本年度は継続中のfMRI実験を完了し新たに2つの実験を開始した。1)「人物」と「場所」について、提示反復による賦活減少を指標に、「個人的」と「有名」の既知カテゴリーの脳内表象を調べた。記憶要素・既知カテゴリーに共通の表象と、それぞれ固有の表象とについて、総体的に明らかにすることが出来た(国際学会発表済み、論文準備中)。これは世界初の成果である。2)記憶要素間や情動体験量をコントロールするために、学習セッションを用いて人工的に「出来事」記憶を操作する実験を開始した。動画を用いたロールプレイング形式の学習(偽体験)セッションを被験者に行わせ、形成された人工的な「出来事」で実際の自伝的「出来事」をモデル化できるか、想起課題遂行時の脳活動を比較して検討する。既に刺激の選定が完了し、fMRI実験を準備中である。3)上記2に密接に関連して、出来事を経験する際に、状況を構成する要素に対しての反応の個人差について検討を行う実験を開始した。、複雑な社会的状況を示す動画や写真の認知の際の脳活動とアンケートで得られた各被験者の日常生活習慣や性格傾向との相関を解析する。既にアンケートの作成が完了し、fMRI実験を準備中である。
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