我々が日常的に経験した「出来事」を様々な記憶要素の連合と考え、その脳メカニズムの解明を目指している。「場所」「人物」「物体」の3種類の記憶要素の脳内表象と、これらが情動体験と連合するメカニズムが研究対象である。本年度は、より統制された実験課題によって3種類の記憶要素の連合メカニズムを明らかにした。記憶要素をコントロールするために、学習セッションを用いて人工的に「出来事」記憶を操作した。被験者が探偵として事件を解決するロールプレイング形式の学習(偽体験)セッショシを行わせ、形成された人工的な「出来事」で実際の自伝的「出来事」をモデル化した。事件が起きた場所の写真で文脈プライミングを行う条件と行わない条件で「人物」と「物体」の認知課題を被験者に行わせた。文脈プライミングを行った場合、「人物」と「物体」の認知時に連合している出来事を想起する処理過程が効率化され、連合に関与する脳領域の活動が低下することが期待される。測定した認知時の脳活動を、2条件間で比較した結果、左の海馬と下側頭回前部にプライミングに伴う活動低下が見られた。これらの領域が「場所」「人物」「物体」の3種類の記憶要素を出来事として統合する役割を担うことが、世界で初めて明らかとなった。この成果について現在学会発表・論文執筆を準備中である。さらに事件解決の成否や被験者の性格と、学習セッション・認知セッションでの脳活動との相関を検討し、情動体験との連合メカニズムを解析中である。
|