研究概要 |
本年度は,平成18年度において構築した記憶関連課題を用いて,機能的磁気共鳴画像と脳波の同時計測を開始した.また測定する脳波データと機能的磁気共鳴画像の統合化解析手法の構築を行う.同時測定する脳波データには磁気共鳴画像装置の高磁場環境(1.5テスラ)に由来するアーチファクトが重畳する.そこで,測定後の脳波データから重畳するアーチファクトを除去することで連続的な脳波データを抽出する.アーチファクトを除去した脳波データをウェーブレット変換することにより,記憶関連課題を遂行中に頭皮上に出現する脳波イベントを抽出を実施した.さらに,電気活動である脳波イベントは時間的に早い活動(数百ミリ秒)であり,機能的磁気共鳴画像で測定する血流活動に由来する信号値は遅い活動(数十秒)であるため,両者を直接的に比較することは困難である.この問題を解決するために,血流反応動態関数と呼ばれる二つのガンマ関数の和で表現される時間遅れ関数を脳波イベントに畳み込み積分することにより,対応する機能的磁気共鳴画像信号の期待値を導出した.得られた期待値と実測値との回帰解析を実施することで,脳波の発生に関連して活動する空間部位の同定を行なった.なお,平成19年度においては当初予定通り,20名の同時計測を実施した.計測した機能的磁気共鳴画像や頭皮脳波の中には,上述したアーチファクトの除去手法において不完全なものや被験者の課題遂行能力が不十分な場合が発生する問題が予想されるが,本提案研究で用いる統計的手法では12名程度以上のデータがあれば信頼性のある解析結果が得られることから,計測した結果の統計解析を平成20年度において実施することで記憶神経回路創発メカニズムの解明を目指す.
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