コレステロールとチオール分子や高分子から成る絶縁性マトリックス膜を構成する分子の分子間相互作用を考慮した分子鋳型膜の設計および作製について検討した。チオール分子をマトリックスとする場合、チオール分子のアルキル部位の選択によりコレステロールとの相互作用が強く、且つ隣接するチオール分子同士の分子間力による強固な膜の形成が可能になる。これまではステアリルメルカプタン(炭素数18)を用いたが、官能基や架橋構造を持つチオール分子により精巧で強固な分子鋳型を作製し、特に選択性、感度などの向上を目指した。また、医療計測の場合、人体接触する箇所はディスポーザブルであることが好ましいため、使い捨て電極として金薄膜電極の作製・適用について検討した。その際、形状を自由に制御できるプラスチック材を基板とした蒸着や、イオンスパッタ法、金ナノ粒子を用いた無電解めっきを適用し、電極表面観察を行い、センシング特性について検討した。ナノ粒子を用いて作製した金ナノ粒子膜ではセンサ応答が増大する効果が得られ、電極表面に存在する微細な構造がその電流応答を増幅するものと考えられる。これらの成果について、学術誌(米国化学会Analytical Chemistly誌やJournal of Flow Injection Analysis誌)への掲載、国内外学会(日本分析化学会、電気化学会、フローインジェクション分析国際会議など)での発表を行った。
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