本研究課題では、スポーツにかかわる非定常流体力を風洞実験により測定し、遺伝的アルゴリズム(GA)による多目的最適化により、新たなスポーツスキルやスポーツ用具の開発を目指している。本年度は、無回転サッカーボールに働く空気力の非定常性について、実験的に調べた。また、ラグビーのタッチキックに関して、GAにより、最適な蹴り出し条件を求めた。以下、具体的に説明する。 ●無回転サッカーボールに働く空気力の非定常性 無回転サッカーボールに働く空気力を6分力検出器によって、測定するとともにタフト実験によって、ボール後流を可視化した。その結果、4つの特徴的な速度域があることが明らかになった。すなわち、1.臨界レイノルズ数未満の領域、2.臨界レイノルズ数近傍、3.臨界レイノルズ数以上から25m/s未満の領域、4.25n/s以上の領域である。1.と3.の領域では、空気力は時間に対して、ほぼ一定となるが、2.と4.の領域では、空気力は時間とともに変化した。その振動の振幅はボールの自重程度であり、周波数は約1Hzであった。これらより、速度域によっては、ぶれ球シュート出現の可能性が示唆された。これらの非定常空気力を利用して、飛翔軌跡を計算した結果、ぶれ球シュートが出現した。しかし、そのぶれ幅は数cm程度であり、実際よりも小さかった。 ●ラグビータッチキックの最適蹴り出し条件 空力データを基にGAによる最適化を実行し、最適なタッチキックの蹴り出し条件を明らかにした。従来、タッチキックはタッチラインから遠い側の足で蹴りだすことが常識であった。今回の最適化の結果、これは飛距離に自信はあるがコントロールに自信の無いキッカー向けの最適蹴り出し条件であることが明らかになった。逆に飛距離に自信はないが、コントロールに自信のあるキッカーの場合は、タッチラインから遠い側の足で蹴り出すべきであることが明らかになった。
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