本研究は、レクチャからの能動的学習を促進する協調的な学習環境の実現と長期に亘る学習過程の分析を通した基礎理論の構築を目指す。本年度は次の2点を重点的に実施した。 1.学部2年生授業を対象として協調学習カリキュラムおよび支援環境の原型を構築すること 2.その成果を他授業に移転して妥当性を幅広く検証すること 1.協調学習環境の構築 2004年度から3年間に亘って行ってきた実践授業を総括し、その成果の年度間比較から、 ・複数講義間の内容の関連づけよりも各講義の内容理解をまず支援すべきこと ・聴講スキルの獲得は講義内容の理解が確固たるものとしてあって初めて可能になること ・講義をビデオで振返らせる際、内容の規範的理解を目指す教員主導の活動では局所的な理解のみが可能になるだけでその長期保持が難しく、むしろ学習者主体の探索的な振返り活動の方が長期保持可能な理解構築や他講義内容との関連づけに役立つこと がわかってきた。具体的に3点目の効果を比較する実験も授業内で行った。 今後の課題としては、学習者が理解した内容をお互いに交換させ、その後の学習活動に結びつける工夫が必要なこと、そうした自発的な協調学習活動をビデオシステムのログなども使って詳細に追い、そこから理論構築を目指していくことが重要なことが明らかになった。 2.他授業への移転 講義をビデオで振返ることができる環境を他学科の2年生対象授業に用意し、その学科でのゼミ選択とも関連づけて授業を実践・検証したところ、動機づけの高い学生はこうした素朴な環境があるだけでも自発的な振返り活動に従事しやすいことが示唆された。今後は、ビデオのアーカイブだけでなく、専門資料やゼミ内容の紹介など、多種類のリソースを組み合わせる必要性が示唆された。また撮影の簡便性のため、講義のパワーポイントに音声を連動させて収録するシステムも開発しつつある。
|