研究概要 |
本研究は, 大学の教育現場において今でも主要な知識伝達手段である「講義(レクチャ)」を研究対象に取り上げ, 学生がレクチャから能動的に学習するための支援を行って, その過程に関する基礎理論を構築する. 具体的には, レクチャを録画しクリップ単位で見直せる掲示板機能付ビデオシステムを活用し, さまざまな協調的学習活動を導入して効果の検証を行った. そこから次の知見を得た. ・一度教室で受講した講義でも, ビデオシステムによる振り返りでより深い学習が可能になる. ・振り返りを協調的に行うことで, 講義が主張やその根拠等の構成要素からなることなど, 講義の「仕組み」に関する理解が促進される. ・こうした振り返りをクラスで一斉に同じ内容について行う方法に比べ, 学習者ごとに異なるクリップを分担し, その内容を交換する「ジグソー法」の方が, 内容や構成に関する理解を深化させる. 本年度は, 上記のような学習方法, 成果の検討に加え, そもそも「わかりやすい講義」とは何かを探るべく, これまで蓄積してきた複数の講義の年度間比較を行い, 学生の理解度や第三者評価も踏まえて, 教員が講義を理解可能なものに修正しようとする際, 共通に見られる特徴を抽出した. 結果,・一つの講義内の節目々々で同じスライドを繰り返し使用するなど, 講義の構造を明示化すること, ・主張を繰り返し複数の具体例で根拠付けるなど, 意味的なつながりをより強固にすること, という二つの特徴が見出された. これを講義のデザイン原則として, 新しい教員の講義構成支援を行ったところ, 肯定的な結果が得られる一方で, そもそも教員自身の講義内容の理解度が十分でなければ, 表面的な支援としかなり得ない危険性も示唆された.
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