研究概要 |
地殻中には、地上や海底からしみ込んだ液体が間隙水として存在しており、火山活動などによって破壊的な地殻変動がおこれば、これら間隙水の流速や化学的性質に影響を与え、地中から湧出する熱水・冷湧水中における酸化還元環境の変化として捉えられる可能性がある。また、海水循環が少ないところでは、人為起源の汚染物質による腐敗が進むことにより、水域の無酸素化が進行し、生物活動に深刻な影響を与えているケースがあるため、酸化還元環境の把握は急務である。酸化還元指標物質の中でも硫黄はS2-,S,SO42-などのように多彩な酸化還元状態を取ることを知られている。地下水中には火山ガス由来の、無酸素領域では還元由来の硫化物イオンが多く存在する。したがって、硫黄の天然水中での硫黄関連物質の挙動を把握することにで、地球環境変動の把握において重要な酸化還元状態に関するパラメーターを提供することが可能であるといえる。しかしながら現時点では、分析機器の現場での適用は困難を極めており、化学成分の現場分析に関しては、数日から数週間程度の連続観測が限度である。本研究では、このような現状にブレークスルーをもたらすべく、水深4,000mの深海において、1年程度メンテナンスフリーの状態で作動する現場型化学センサの開発を行った。またここで開発した装置を用いて、実際の観測を行い、地殻変動や環境汚染検出のための新規手法の構築を目指した。 試作した硫化物センサの耐圧作動試験を行った。被圧部に陸上試験で開発した電極を装着し、海底熱水活動が観測させている最大水深の水深4,000mまでの深海底で作動するように設計を行っているが、実際に東京大学生産技術研究所の耐圧試験水槽や、無人潜水船ハイパードルフィンなどに搭載し、圧力下での作動状況の確認を行った。
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