研究概要 |
今年度は,二回にわたる氷河の調査およびサンプルの分析を行った.調査は前年度に対象氷河として選定した中国新疆ウイグル自治区のウルムチNo.1氷河である.調査は,2008/6/27,2008/7/29-8/6の二回行った.微生物分析のための氷河表面の高度別のサンプリング,および表面のスペクトルアルベドの測定を行った.さらに融解期の氷河表面の形態,アルベドの時間変化を明らかにするために,自動気象測器,自動デジタルカメラを設置した.氷河表面のサンプルの顕微鏡分析の結果,昨年同様,シアノバクテリアおよび緑藻が繁殖していることが確認できた.また,今年度のサンプルには昨年にはみられなかった緑藻の1種(シリンドロシスティス属)が大量に含まれていた.このことは,年によって繁殖する藻類の群集構造が大きく変わることを示している.全体の藻類バイオマス,クロロフィルについては,ほぼ昨年と同様の値であった.また,6月から7月にかけての季節変化は,氷河上流部でバイオマス,クロロフィルともに上昇することが明らかになった.氷河上に設置した自動観測機の結果から,融解期の氷河表面はアルベド,表面構造の変化が激しいことが明らかになった.このような変化は,表面の微生物相にも大きく影響していると考えられる.今後,これらのサンプルやデータの分析をすすめ,季節変化の環境要因を整理していく予定である.
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