わが国や欧州における酸性化の樹木指標に関連するこれまでの研究についてレビューを行い、根のCa/Alモル比が確立された有効な指標であること、早期に影響診断できるという観点から樹木生理指標確立の重要性を指摘した。 ヒノキ、アカマツ、クロマツ苗について、アルミニウム(Al)に対する根端カロース特性を明らかにするために、アルミニウム1日添加実験をおこなった。ヒノキではスギと同様に、1mMのAl濃度処理でもカロース形成が認められなかった。しかしながらアカマツ、クロマツでは1mMのAl濃度処理でカロース形成が認められた。このことからスギやヒノキでは根端カロース量は酸性化指標として有効でない可能性が示唆された。一方でアカマツやクロマツでは、根端カロース量が酸性化の指標なりうることが示唆された。 カロース形成特性の異なるスギとクロマツについて、1mMのAl 1日処理後の根端Al分布様式をSEM-EDXを用いて調べた。その結果、両樹種ともに皮層細胞壁よりも表皮細胞壁にAlが蓄積しやすい傾向にあった。すなわち根へのAl蓄積とカロース蓄積特性とは必ずしも一致しないことが明らかとなった。 酸性土壌を用いて栽培されたヨーロッパブナの根端カロース形成量を測定したところ、土壌中のA1量とは相関が認められたが、土壌溶液中のAl濃度や根のCa/Alモル比との相関は認められなかった。この結果から、ヨーロッパブナのカロース形成量をAlストレスの指標として実際の森林で用いることには注意する必要があることが明らかとなった。
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