根端のアルミニウム分布特性は、クロマツ苗とスギ苗ともに、根の中心柱など内側よりも外側の外皮細胞などに蓄積しやすい傾向にあった。カロース分布特性は、クロマツ苗では皮層細胞壁に蓄積するものの、スギ苗では皮層および外皮付近に蓄積することが明らかになった。さらにスギ苗では内皮細胞に強い自家蛍光があるため、カロースが検出されにくいものと示唆された。本結果から、スギ根端の内皮細胞などの根の細胞構造の違いがそのカロース特性に影響を与えており、これらのことが、スギにおける酸性化の生理指標として根のカロース特性が有効でない原因であることが示唆された。さらにこれまで報告されている樹木根のカロース特性からも、スギではとくにその形成量が少ないことが明らかとなった。 また、関西地域における酸緩衝能の異なる森林土壌を用いたスギ苗植栽実験では、酸緩衝能の低い土壌で育成されたスギ苗の苗高および根成長は、酸緩衝能の高いものよりも有意に低かった。しかしながら根の呼吸速度および根直径など根形態については、苗高および根成長に比べてその差は小さかった。
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