研究課題
脳機能は、個体差が大きく、基礎科学としても未解明の点が多く、特に発達期は脆弱であり不可逆的変化を受けやすいことから、化学物質影響科学のターゲットとして極めて重要である。そこで本研究ではダイオキシン、ポリ塩素化ビフェニル類の低用量曝露を陽性条件として、胎児期から出生直後にかけての環境中有害化学物質が高次脳機能の発達に及ぼす影響について解析する。影響解析の出発点として(1)連合学習と行動異常の両面を検出する新たな行動毒性試験法を確立し、(2)ダイオキシン、ポリ塩素化ビフェニル類類の発達神経毒性を解明し、同時にそれら曝露動物を(3)治療法開発のための疾患動物モデルとして提示することを目的とする。本年度は、イベント・アリーナ装置におけるFlavour Map法を確立し、ラットにおける対連合学習を数週間で確立させることに世界で初めて成功した。そして、Flavor Mapを1度形成した動物は、新規の場所と味のペアを1回の試験で学習しうること、Flavor Mapを習得してから48時間後に海馬を破壊してもFlavor Mapの記憶は残っていること、しかし習得3時間後の海馬破壊ではFlavor Mapの記憶が消失することを明らかにした。本研究の海馬破壊動物は、アルツハイマー病などにみられる逆行性健忘症の典型的なパタンであり、このFlavor Mapの記憶機能は、ヒトが街の地図を記憶するのと同一の高度な対連合学習機能であることが明らかとなった。以上の研究成果は、英国Edinburgh大学Richard Morris教授との共同研究としてSCIENCE誌にFull Articleとして掲載された。また、ダイオキシン曝露動物を作成し、Flavour Map法を用いた連合学習行動試験を開始した。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (3件)
Science 316
ページ: 76-82
Toxicol Lett. 168
ページ: 75-82
J Neurobiol. 66
ページ: 1411-1419