研究概要 |
超音波照射による廃液中重金属錯体の処理を効率的に行うプロセスの構築を目指して,今年度も昨年度に引き続き,廃液中金属錯体のモデル化合物としてポルフィリン錯体を採り上げ,ポルフィリン錯体の超音波分解に及ぼす重金属種の影響と,溶液のpHの影響について調べた。重金属として,Pb,Zn,Cuイオンを使用した。溶液調製時(超音波処理前)の段階ですべてのポルフィリンが重金属錯体を形成するように,化学量論的に重金属イオンをポルフィリンよりも過剰量溶解させて試料溶液を作成した。また,各金属錯体が安定に生成・存在する個別のpH条件にて試料溶液の調製を行った。さらに,ポルフィリン錯体の分解と比較するため,金属フリーのポルフィリン溶液も作成し,併せて超音波照射実験を行った。 pH依存性を調べたところ,pHが低いほど,金属フリーのポルフィリン,ポルフィリン錯体ともに,分解速度が上昇することが明らかとなった。また,ポルフィリンとポルフィリン錯体の分解速度を比較したところ,ZnおよびPb錯体については,同一pHの条件において,錯体の方が,分解速度が小さいことがわかった。一方,Cu錯体については,金属フリーのポルフィリンと比較して,分解速度が向上することが明らかとなった。重金属種さらには溶液pHの違いにより,錯体の超音波分解挙動が大きく異なることは,提案プロセスを構築.最適化する上で重要な知見が得られたものと考える。今後は,ポルフィリン以外のキレート剤,さらにはPb,Zn,Cu以外の重金属種についても,実験的検討を行う必要性があるものと考える。
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