研究概要 |
本研究では、プラスミド・オーグメンテーションという手法を提案している。染色体外の環状のDNAであるプラスミドには、通常の生育には不要であるが、特殊環境下の生存において不可欠な遺伝情報が含まれており、自然界の多くのバクテリアがプラスミドを有している。外来細菌のプラスミド上には難分解性物質の分解遺伝子のような有用遺伝子がコードされている場合があり、さらに接合伝達性プラスミドは、性繊毛を通じて細菌の属種を超えて細胞から細胞へと伝達されるものもある。有用遺伝子を持つプラスミドが、土着細菌群の優占種に接合伝達されれば、植種した細菌自身は淘汰されてしまっても、有用遺伝子は残り、目的は達成できる可能性環境浄化の促進のため、有用微生物を汚染現場に植種する方法が提案されている。 本研究では、まず、水・土壌マイクロコズムにプラスミド保持微生物を導入し、その接合伝達過程をモデル解析によって評価した。グラム陰性広宿主域プラスミドRP4をモデルとし,供与菌としてE.coli C600を用いた。プラスミド保持菌に選択圧が加わらない条件では、プラスミドが伝達されたTransconjugantはほとんど増殖せず、プラスミドが二次伝達される可能性が低いことがわかった。 また、2,4ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)汚染土壌スラリーマイクロコズム(廃水処理リアクター)に2,4-Dの分解遺伝子を有し、さらに水銀耐性遺伝子と接合伝達遺伝子群を持つプラスミドpJP4を導入する浄化実験を行った。その結果、pJP4をプラスミドが伝達されたTransconjugantは浄化に大きく貢献し、長期的に残存することが判明した。
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