研究概要 |
プラスミド・オーグメンテーションという手法を提案した。染色体外の環状のDNAであるプラスミドには、通常の生育には不要であるが、特殊環境下の生存において不可欠な遺伝情報が含まれており、自然界の多くのバクテリアがプラスミドを有している。外来細菌のプラスミド上には難分解性物質の分解遺伝子のような有用遺伝子がコードされている場合があり、さらに接合伝達性プラスミドは、性繊毛を通じて細菌の属種を超えて細胞から細胞へと伝達されるものもある。有用遺伝子を持つプラスミドが、土着細菌群の優占種に接合伝達されれば、植種した細菌自身は淘汰されてしまっても、有用遺伝子は残り、目的は達成できる可能性がある。本研究では、2,4-ジオキシフェノキシ酢酸(2,4-D)を部分分解できるグラム陰性広宿主域プラスミドpJP4をモデルとし,供与菌としてC. necator JMP134とE. colio HB101を用い、2,4-Dを含む排水を処理する連続回分式活性汚泥プロセス(SBR)にプラスミドオーグメンテーションを実施した。30目の処理実験において、プラスミドを導入しなかった対照系SBRは、2,4-Dを分解できなかった。2,4-Dを完全分解できるJMPI34(pJP4)を導入したSBRは、3日目まで高い2,4-D分解率を示した後、JMPI34の活性汚泥中での淘汰に伴って分解率が低下し、pJP4を受け取ったtransconjugantが増加した20日目から分解率が100%に回復した。自分自身は2,4-Dを分解できないHB101(pJP4)を導入したSBRは、7日間ほどはやはり2,4-Dを分解できなかったが、pJP4を受け取ったtransconjugantが増加した20日目から分解率が100%に回復した。すなわち、供与菌自身が2,4-Dを分解できなくとも、プラスミドオーグメンテーションは成功することが実証された。
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