研究概要 |
レゾルシノールと1,5-ペンタンジアールとの反応を塩酸存在下、エタノール中、80℃、48時間の条件で行った結果、ゲル化合物は全く得られず、非プロトン性極性溶媒に可溶である化合物が83%の収率で得られた。得られた化合物の構造確認をIR、^1H NMR、MALDI TOF-MSにより行った結果、環状化合物であることが示唆された。さらに得られた化合物の溶解性を向上させることを目的として、得られた化合物とジ-t-ブチルジカーボネート(DiBoc)との反応を、ピリジン中、60℃、48時間の条件で行い、t-ブトキシカルポニル(Boc)基で水酸基が100%置換された誘導体を合成し、単結晶X構造解析により、得られた環状化合物が内部に大きな疎水空孔を有する大環状化合物であることが判明し、水車のような特異的な構造を有していることから、Noriaと命名した。さらに、レゾルシノールと種々のα-ω-ジアルデヒド類(OHC-(CH_2)_n-CHO,n=2,4〜9)との反応を同様の条件で行った。その結果、n=2の場合、M_n=5700、M_w/M_n=1.4のポリマーが得られ、それ以外の場合は環状化合物が得られることが判明した。また、環状化合物の構造には偶奇性効果が存在し、n=4,6,8の場合は2つのカリックスアレーン骨格が結合された環状構造体(ダイマー)が得られ、n=5,7,9の場合は3つのカリックスアレーン骨格が結合された環状構造体(トリマー)が得られることが判明した。このことは、メチレン鎖の長さにより、環状化合物(動的共有結合化合物)の構造が完全に制御されていると考えられる。Noriaとブロモ酢酸エチルとの反応により対応する誘導体、Noria-EEを合成し、各種アルカリ金属のピクリン酸塩水溶液からCH_2Cl_12溶液に対するイオン抽出率を、UVスペクトルを用いた水溶液の吸光度測定により算出した。その結果、Noria-EEはRb^+イオンに対して高い選択性を示し、Noria-EEは従来のカリックスアレーン骨格にはない剛直で大きな包接部位を有し、その特異的な構造に起因して選択的な金属イオン包按能を有することが判明した。
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